いつか記憶から零れ落ちるとしても

思いやりのある優しい男の子

決意はやがて絆へと変わる


今更ながら弱ペダのれんくんについて、と言うより映画を観終えて感じた諸々。





予告の時に叫ぶシーンが映っていて、腹の底から出た叫びを聞いたことがなかったから驚いた。
そんな声を聞いたのは初めてだった。
映画本編の中では何度か叫ぶ箇所がある。
「はあああああ」「まだまだあああああ」「ああああああ」「勝つ!」「ひめ!」と文字にしにくいものが多い。
体の内側から湧き上がる、血が沸き立つ、もはや血の滲んだ声で叫ぶ。凄いと思った。
その叫びを発する時は必死の形相で、それこそアイドルでは見ない。縦横無尽に走る線、力の集まった顔。
コンサート会場で「行くぞ!」と叫ぶ時の顔とは声とは全く違う。
こんな演技するんだ出来るんだと思った。
実際自転車に乗った時に自然と思いが乗ったと話していたので、その効果もあったのだろうけど、悔しさとか執念とか意地とか勝機とか全部飲み込んで捕らえた圧(熱)を感じさせられる。
ちょっとした恐ろしさと言うか本気度と言うか。
マジだと、勝負心に火が付いたと。
全力を出し切るサマが凄まじかった。迫力があった。


一方で「ひ〜め♪ひめひめ♪」と口ずさむところが可愛くて仕方なかった。特に鼻歌でひめひめ歌うのは可愛い。
入部する時の扉越しの小野田くんなんて臆病かわいい(笑)
個人的に可愛くて好きなシーンは、合宿で健太郎くん演じる今泉くんとの「銭湯行くぞ!」「入りました」というやり取り。


「僕は友達がいないから」とアニメ研究会を復活させるために仲間を集めるために必死かつ全力の小野田くんを見て胸がギュッと締め付けられた。
けど、基本アニヲタで凄いペダル回すヤバいキモい奴みたいな姿が根底にあって(笑)当初今泉くんにも「なんだこいつ?」と引かれているだけあって、確かにキモい(笑)
ただ原作ファンからすると『キモい』で正解のようだから安心した(笑)


れんくんが演じる映画の小野田くんは引っ込み思案で臆病で一人ぼっちでおどおどしてる子。
そんな子が徐々に人の目を見て話すようになったり堂々と歩くようになったり、はつらつとし表情も明るくなって行く。
監督から言われた通り、変化に気を付けて演じることが出来ていたように思う。


みんなと走る楽しさを知った時、小野田くんから楽しい嬉しいという気持ちが溢れていた。
本当に楽しそうだった。
そして、役割を任された途端キラキラと輝いた。
初めての役割に希望を見出し期待を込めて絶対成し遂げてみせると意気込んだ顔は強く美しかった。
弱ペダでは、普段見ない、いや今までも見たことのないれんくんの泥臭い表情から孤独な表情、青春という輪の中で楽しむ表情を見ることが出来てよかったなと思う。



贔屓目であることは重々承知しているけれど、れんくんの演技が役に乗っていてアイドルオーラも消せていて嬉しくなった。
髪型を変えたら誰でもアイドルではなくなることが出来るのかもしれない。
でも、声色や表情・動き含め、演技も随分と成長してると感じた。
もちろんまだ拙いところは多々ある。
けれど、視線の移り方や話し方、表情の作り方が以前よりも自然になった。
総北1年の2人がれんくんの演技を引き上げてくれたのかなとも思う。
今回は弱ペダのアニメの声に近づけるために意識して高い声で話すようにしたらしい。
うち執の時に高校生役だから普段よりも高めに話したと話していたがその時よりも更に高かった。


一年生のウェルカムレースでケイデンスを上げて、今泉くんと鳴子くんに追い付いた時とかグッときたし、県大会の時の必死に役割を全うしようと試練を乗り越える姿には胸が打たれとてもよかった。
自然と応援したくなる。
そうなるのはれんくんではなく、そこに小野田くんが居たからだ。
私が観たのはれんくんではない。小野田くんだった。




坂を登り頂上を取るために必死にペダルを回す姿は手に汗を握る。
過酷な撮影であることをこちらにはあまり悟らせずに公開を迎えた訳だけれど、かなり大変だっただろうと察する。
舞台挨拶の最後に出た「報われた」という言葉。
この表現を選んだところからして厳しかったに違いない。
普段努力の欠片も見せない人だから、本当に本当に頑張ったんだろう大変だったんだろう並大抵の努力ではなかったんだろうと思う。
だから好意的な感想を述べてくれる人が予想よりも居てファンとしてとても嬉しい。
それでも最後の最後まで努力や頑張りを言語化しないところが好きだ。


しかし、言葉にしないということはきっとそこを注視して欲しくないのだろう。
裏を読まず純粋に真っ直ぐに観て欲しいのだと思う。
だが、れんくんの思いとは裏腹にファンの感想は注目は真っ先にれんくんの努力に向く。
でも、きっと見て欲しいのはそこじゃない。
れんくんが演じる小野田くん自身に魅力があるから、映画のストーリー自体に惹かれるから、頑張ったことをわかったうえで、やはり私達ファンも言及する必要はないのだろう。


レースはもちろん、ペダルを漕ぎ速度を速める瞬間は倒れないかドキドキした。
これはれんくんに限らず健太郎くんとか自転車に乗っている演者の人たち全員に対して。
大丈夫だとわかっていてもハラハラして緊張感があった。それ程疾走感があったと言える。
景色が綺麗で山の緑も海の青も映えた美しいロケーションも見応えがある。
ギアを変える音がくっきりはっきり聴こえる瞬間が好きだなあと思う。臨場感と緊迫感。映画館でしか味わえない贅沢さ。
ペダルに足を掛ける音、回す音、車輪が回転する音が心地良い。
パレードランからの隊列を遠景で映しているところ、隊列が綺麗かつ風景が美しくて好き。
その点も魅力的だった。


心が熱くなる・あたたまる素敵な作品を通して、この夏れんくんに会えたこと嬉しく思う。





スクリーンに映る姿は永瀬廉とは別物として存在しているから凄いなあと常々思っていて、真逆であるアイドル永瀬廉の姿を知っているのに普段もこんな人かのように瞳に映り錯覚しかける。
れんくんがこれほど“表現者”になるとは思っていなかったので、感慨深くて言葉で表せない興奮が押し寄せてくる。
映画を観ながら興奮と感動と感慨が入り混じった感情から泣きそうになる。幸せだ。
本人は恋愛モノに出たいようだけれど(それは至極真っ当、当然の気持ち)そういった類いとは無縁の己との闘いや成長であったり周りとの協調を大切にする作品、どちらかと言うと演技が重視される作品に出て経験を積めるというのは個人的には良いことだと思う。
明らかにれんくんの演技に変化が出てきている。
それを目の当たりにすることが出来たのも弱ペダを観て感動した(驚いた)ことの一つ。


もっとたくさんの人に観てもらえたら良いなぁと思う反面、着実な一歩を踏めているのがわかって、それだけで十分じゃないかなんて思ってしまう。
そんなの数字の世界だと話にならないとわかっているので、自己満でしかないのだろうけれど(この場合は1ファンである私だけの満足という最低さ)それどころか応援している人を潰すことになるような考えなのだろうけれど、若いうちにいっぱい経験を積んで失敗して成功して負けて勝って習得して、役者の一面を作り磨き上げていく。未来が楽しみになるほど。
だから段階を経て行くことが可能な、一つ一つのステップを踏んでいる今を大事にしたいなどと思う。
本来であればこの経験値で主演を張るだけでも末恐ろしいものなのだし。


でも、次に繋がりますようにとも願う。
だってファンは我儘だから。