いつか記憶から零れ落ちるとしても

思いやりのある優しい男の子

始まりの一歩だ


たぶんこれで綴ることは最後になると思う















9月30日付で退所し、10月1日0時に映像が解禁され早3ヶ月が経とうとしている。
本人が「生き急いでるみたい」と言ったように豪速球のスピードで今日まで来た。

今までジャニーズを辞めた人に触れたことがなかったので、FCに入るという第一段階で立ち竦んだ。友達の熱烈な後押しがなければ入ってなかったかもしれない。
それくらいジャニーズというブランドが好きと言うか、これまで掲げていたイメージが崩れることが怖くてFCに入るという初歩的な一歩さえ踏み出すことが怖かったと言った方が正しい。
実際SNS解禁(特にTwitter)で本人が紡いだ言葉のままを読むことが出来るようになり、事務所にいた頃は体裁を整え綺麗なパッケージを施されていたからこそ、商品(タレントやアイドル)として成り立っていたのだなと感じる瞬間も増えた。
こんな形であんなに嫌だと思っていた事務所のブランディング力を思い知るとは思わなかった(苦笑)

それでも、ファンや彼を取り巻く周辺の反応等を見ていると、濃いファンが居る状態で辞めるということはある程度力を持ち独立してもやって行けるものなのだとも感じさせられた。

ツアーはライブハウスというドームとは比べ物にならないくらい狭い箱で行われ、チケットを得るのも一苦労。
案の定私は全滅だった。チャンスがあるたびに申し込んだけれど結果は変わらず。
前の時の方が全然取れたゆえに「顔を見せたくて最速でツアーをやった」と言われてもこちらは見てないし見れないし…と半ば嫌気がさした(笑)


最後の賭けがアルバムのリリースイベント。
ツアー全滅でファンの多さを改めて感じたから当たるわけない外れるものと決め付けて申し込んだら、当選した…!
やっと、ようやく、お顔が見れた。
何か大きく変わっているかと少しドキドキしていたのだけど、見た目はアイドルっぽさはなくなっていたけれど、話すと今までと変わらなかった(当たり前かな)

箱の中身は何でしょう?とかQ&Aをやっていて、ファンとトークする場面が多かった。
そのやり取りを見ながら今までだったら苛立ち等の感情が顔に出ていただろうに上手く隠し相手を交わしたり返答していたりしていて、大人になったねと思った。
私物を渡しているのを見て、退所したらこういうこともするようになるんだなと思ったりした。

あと、やたら「ごめん」と「ありがとう」を口にしていたと思う。
十年以上彼を見てきてここまでこういった類の言葉を何度も発したことはなかった気がする。
一人になったから、ファンを無下に出来ないのかもしれない。もちろん今までもファンを無下にしていた訳ではないが。


大きなところ(グループや事務所)から1人になるということはこういうことなのだと死ぬほど実感させられた。
全部自分でやらねばならないだけではなく、全部自分1人で受け止めなければならなくて、良くも悪くもあらゆる角度からヲタクに消費されて行くことになるんだなって。
一挙一動に「かわいい」と言われる。ファンはただ立っているだけで何もしなくとも「かわいい」と言う。
何かあれば即反応される。その反応はダイレクトかつ真正面からやってくる。
今まで嫌だったり苦手だったりしたことも受け止めなければならない。
その道を選んだのが本人だと言われれば、そうなのだけど…。
それに、それだけ彼が愛されてる・求められていることの表れなのだろうけれど。

ライブでも野次紛いの言葉が飛ぶみたいだけど、リリイベでも会話したい触れたいヲタクの圧や勢いがえぐいし、とにかく節操がない(苦笑)
今までなら防げてた場でまでヲタクの欲(欲望)が渦巻いていて、正直私はちょっと怖かった。
ストレートに本人にぶつけるから大変だろうと思う。そういうの苦手なタイプだろうしね。


リリースイベントの最後に「応援されることは励みやプレッシャーになりますし、(ファンには)プレッシャーを与え続けてくれる存在で居て欲しいです。過度なプレッシャーはダメですけどね。プレッシャーはそれだけ期待されてるってことですし、これからも期待に応えられる僕で居たいです。」と話していて素敵だな好きだなと思った。
「期待に応えられる僕でいたい」なんて応援してるタレントから言われるなんてファンはこの上なく幸せだろうと思う。
「(ファンには)プレッシャーを与え続けてくれる存在でいて欲しいです」と言いながらも「それぞれの楽なスタイルで応援して興味を持ってもらえれば」とも話していて、数字で競う昨今ファンの在り方も度々論争が起きる中でそういう配慮と言うか優しさを添えるところもよかった。

ライブのオーラスでも「あえてプレッシャーをかけるために言いますけど、僕に期待してもらって大丈夫です!」と最後に言い放ちステージから去った。
かっこよかった。
そういうことを言うのが“いかにも”と言う感じだけど痺れた。
ヲタクの期待なんてエゴでしかないものを肯定し、むしろ期待を寄せてと言うのは男前だった。



所詮私はアイドルが好きだからやっぱりジャニーズに居た時の姿の方が好きだと思ってしまったのだけど、その割にまだ退所した実感があまりわかなかった。
グループを辞めて事務所の中でソロで活動しているかのように錯覚する。

ピアノマド(NOMADのピアノver.)をリリースイベントの最後に歌った。
照明が落ちスポットライトが当たる中ステージの真ん中に座り歌い上げる姿を見ていたら、安心したのかなんなのか泣きそうになってしまった。
長い間やってきて、彼が選び進んだ最終の地はここで、最終の選択はこれだったのだなぁと、これまでの姿と今回の姿と未知の今後が重く深く心にのしかかった。
ほぼずっと第一線で活躍してきた彼がこの現状に自ら身を置くとはなぁ…
頑張ってるなんてそこら辺にいる一般人の私が思うなんて偉そうで何様だという感じだけれど、頑張ってた。すごく頑張ってた。

そういえば、ピアノマドを歌い終えた後に「湿っぽい感じになっちゃった」と言ってたけど、ピアノのみで歌声をじっくり堪能でき、“今の錦戸さん”の声が響き渡り、歌声と共に錦戸さんの色に空間が包まれ染まって行くようで素敵だったと思う。



昔に作った楽曲には拙さがあるのだけどその時にしか出せない感じが好きだし、今の楽曲は培ったものが出ていて良い。
こんな形で年月を感じられるとは思ってなかった。
「ビビリながら進んでるし、それくらいがいいと思ってる」と言う割に「期待してもらって大丈夫」と言って去るのは最高に錦戸さんらしい。

楽しそうに気持ち良さそうに過ごす姿が印象的だった。
アンチは増え続けているし揚げ足は取られるし何か言えば重箱の隅をつつくかのように叩かれるし、お互い様のことも全て彼に非があるかのように言われる。
でもそれが一人になることの宿命でもあるだろうから、
この先も負けずに勝ち進んでねと思う。